では錦町から六日市まで計画線ぞいにたどってみる事にしよう。その前にこちらをクリックして左のウィンドウに詳細図を出してもらおう。以後このウィンドウ内のハイパーリンク個所か左のウィンドウ内の詳細図のホットスポットをクリックすると取材の時に撮った写真を左のウィンドウで見る事ができるので参考にしてもらいたい。
まず錦町駅から。錦町は前述のとおり、第3セクターの錦川鉄道錦川清流線である。この清流線のホーム端の車止めから見えるトンネルが未開業区間の始点の広瀬トンネルである。全長は1.7Kmあり、宇佐川沿いに迂回する国道187号に対してトンネルで一気に反対側の出市へと抜けている。何の事は無いトンネルだが良く見ると、信号ケーブルのようなものが通っている。「こんな開業準備工事が!」と一瞬思ったが、後で出市側から見ると近くに変圧トランスのようなボックスがありケーブルは近くの電柱へとつながっている。なるほど山間に電柱を立てるより安上がりだ。(しかしすさまじくデカい共同溝だ。)
出市に出た岩日北線は大野川沿いに最短距離で六日市側へ抜ける国道187号に対して国道434号とともに宇佐川沿いを上って須川地区から全長4.6Kmの六日市トンネルで六日市へ抜けている。錦町の宇佐川沿いの地区がルート選定の際に要請したのか、それとも勾配の関係からか、若干、遠回りをしている。
国道187号を錦町側から走って来ると国道434号との分かれ目付近で突如として山間から高架橋が出てくる。ここが出市駅の予定地付近である。近くの道を上って行くと、ホームの土台部分が完成している出市駅を見る事ができる。公団の工事はここまでで、以後のホーム上構造物、取り付け部の階段、駅舎などは事業者か地元の負担となる。したがって、築堤上にある他の周防深川、下須川、高根口の3駅はホーム土台等の「ここが駅」と特定できる構造物は無い。あいにくの曇り空だったが、山と山を高架とトンネルで次々に貫いている路盤を見ていると自転車でカッ飛ばしたくなってしまう。いちおうこういった遺構は立ち入り禁止と言う事なっているので念のため。一見頑丈そうに見える橋も、良く見ると竣功いらい長い間管理者がいないまま放置されていたからか、欄干が至る所で朽ちて外れているなど、危険な個所が見受けられたので、よりかかたりして万一、落ちてしまったりしたら、公団も清算事業団も補償をしてくれないのでご注意願いたい。
さて宇佐川沿いにもう少し上ってみる事にしよう。深竜寺トンネルを抜けたあたりに周防深川駅があるはずだが、どうも辺りからは確認出来なかった。もしかしたら写真の位置ではないかもしれないがいちおうこの付近という事にしておく。ここで面白いのは、路盤斜面沿いを通っているため、元からあった道が路盤をオーバークロスするように作られている。この道路部分も公団の建設のようだった。ちなみに写真の左にはお寺があるのだが、工事の際、一部を切り取られたのか、この寺のコンクリート壁に完成年を示す公団の刻印を見つけた。先の道路のように建設にあたって影響を受けるインフラも公団が作っているようだが、お寺の土台とは恐れ入った。
ところで、この周防深川駅予定地付近には雙津峡温泉があり、そちらへ向かう観光客も多いことから錦町としても何とかこの路盤を生かせないかと考えているようである。錦町駅前から途切れる事無く続いている路盤を見るとバスを走らせても良さそうな気がするのだが、ここまでの道路がキチンと整備されている現状を考えるとなにもこの路盤を改修させてまで走らせるメリットは無いように思える。むしろ遊歩道的な物の方が良いのか。しかし遊歩道やサイクリングロードとして整備するにも、高架部分は腐った手すりを交換しなければだし、長いトンネルは照明が必要だろう。金をかけて整備しても利用にあたって料金を取る訳にはいかないし、第一温泉に行くような客がここまで徒歩や自転車でくるのか。ウーン難しい。
さて須川地区へ向けて先にすすんでみよう。周防深川駅付近で国道434号は路盤をアンダークロスする。出市駅付近もそうだったが道路上には立派な高架橋で越える路盤が見える。一見立派で、何事にもびくともしないように見えるが、20年間管理者がいないまま放置されてきたわけであり、阪神大震災の時の山陽新幹線の高架橋がそうだったように、絶対に崩れないとは言えない。そのような危険性を考慮してか九州の呼子線など一部の未開業路線では道路との交差部分を撤去している所もある。錦町もこの路盤の有効的な活用法が無い場合は清算事業団と協議してこれらの路盤を撤去する事も考えているとの事で、まず撤去されるとしたらこういった道路との交点がまっ先に取り壊されるのだろう。
国道434号は先ほどの雙津峡温泉を抜けると、センターラインの無い狭い道になる。狭くなる分岐点ではトンネル工事と拡幅工事が行われており、道路の方の整備は着々と進んでいるようである。そちらはまだ未完成なのでそのうち旧道と呼ばれる事になるだろう細い道を宇佐川に沿って分け入って行く。路盤も川沿いを大小のトンネルを連ねて真っ直ぐに走っている。やはりこの辺も公団建設線独特の高規格さを見せている。須川地区に入ると道は拡幅工事が完成しており、2車線で進む。下須川、高根口と駅予定地を過ぎ、11Km地点付近で路盤は宇佐川を渡って反対側の山に正面から突っ込んで姿を消している。これがこの区間最長の六日市トンネルで(全長4.6Km)山一つ越えた六日市まで一気に抜けている。
道路の方はこの位置から六日市へ抜けるのが非常にやっかいで、センターライン無し、すれ違いもままならないような県道で抜けられるのみである。一応舗装はされているもののかなりの旧曲線と勾配が続く。片勾配なのかグイグイ上って来た割には頂上で平地になってしまい、あとは六日市までゆるやかに下って行く。鉄道トンネルのほうも地図で確認する限り、六日市へ向けてゆるやかな片勾配のようである。
さて、六日市トンネルの出口付近で路盤と再会する。トンネルをでたところで、中国自動車道と交差しているのだが、中国自動車道の橋脚は路盤をまたぎ越せる準備工事が施されており、築堤がくぐりぬけている。中国自動車道をくぐったところから先の路盤は無残にも取り壊され、整地されている。このあたり六日市の市街地ともいえそうなところで、六日市町が競売にかけ、一部は共同住宅としてすでに完成していた。錦川鉄道の延伸が断念されたこともあってか、六日市側では、この路盤をとっておいても仕方ないと判断したのだろう。しかし、鉄道が通るとの事で土地を提供した元の地主は一体どんな気持ちでこの現状を見ているのだろう。きっと無念にちがいない。
もとの路盤も六日市インターの近くで終わっており、中心街とは離れているが、きっとこの辺に六日市駅が出来る予定だったのだろう。