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その1
東関屋−月潟

その1その2その3

 

 面目を一新した東関屋駅
「ムーンライトえちご」を新潟で降り、越後線で2駅、関屋駅に降り立った。冬至とだけあって、まだ6時前の街は深い暗がりに包まれている。ここから新潟交通の東関屋駅までは歩いて10分ほど。同じく新潟交通を目指すものと思しき方々の後をつけて暗いの路地を歩く。
 東関屋の駅はすっかり面目を一新したターミナルになっていた。コンビニエンスストア(ローソン)まで併設されており、便利そうだ。かつて模型誌に「木造駅舎を自作しよう」と題してひなびた木造の東関屋駅が紹介されていたが、バスターミナルと一体となった真新しい駅舎になっていた。ここは1992年に白山前−東関屋の路面区間が廃止された時に、鉄道−バスが一体となった交通ターミナルとして整備されたものである。「一体」と聞いてもピンと来ないかもしれないが、新潟交通の鉄道線では、新潟駅方面のバスの乗車券も通しの割引運賃で買うことが出来、ここ東関屋のターミナルで乗り継げるようになっている。
 さて、始発まで40分以上あるためか、駅舎内は暗いままで、関屋から一緒に歩いてきた同業者の方も玄関の前で足止めを食らって寒そうにしている。ジャケットにキーホルダー代わりに付けてある登山用の温度計は0度よりやや上を指している。天気予報によれば今日の新潟は雨。この時期に雨とはいささかもの寂しいが、朝のいちばん冷え込む時間帯に0度ちょっとなのでは昼では雪にはならないだろう。
 雪が降らない温度とはいえ、立ち止まっていては寒いので、少し散歩してみることにした。来た道を少し戻り、信濃川の土手沿いを歩いてみた。そうすると駅舎とは反対側の車庫沿いに出ることが出来、車庫の中の様子が良く分かる。
 車庫内は三々五々、車両が休んでいる。ほとんどが20形や24形であるが、小田急色のままの2220形も2両組で休んでいる。来たときは確か真っ暗だったと思ったのだが、ホームに近い方の2両組のパンタグラフが上がったらしく、室内灯を点けて待機している。車庫の背面をぐるりと周り、大きな踏切を渡って駅の玄関に向かうと、駅舎内には灯りが点っていた。

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うら寂しい雰囲気の月潟駅

人影まばらな始発電車
 始発電車は6時17分発。電車は2両編成で、営業車両は先頭車のみ。後部車両は室内灯を消している。おそらく白根あたりで切り離して降り返すのだろう。車内は僕と鉄道ファンが5人。それと地元の青年が1人の7人であった。ワンマン運転である。
 間もなくタイフォンを響かせて発車した。釣掛モーターの音もけたたましく、新潟の街はずれの路地をコトコトと走る。6時台の下りとだけあって各駅とも人はまばらだ。誰もいない駅は停車はするもののドアもあけずに発車してゆく。この電車もファンが乗っていなければ、1人しか乗っていないはずである。焼鮒で、カメラと三脚を抱えたファンが下車。お客が料金箱の前に立つと扉を開けてくれるようだ。
 暗がりの中だから速度がどれくらい出ているのか分からないが、おそらく60キロぐらいであろう。新大野で初めて対向列車とすれ違う、あちらはパラパラと乗車があったようだ。こちらも気づくと知らぬ間に数人の地元のご老人が乗っていた。新大野の先で、信濃川の支流の中之口川の堤防沿いに出る。ここから終点の月潟まで、延々と中之口川に沿って走る。堤防の上に道が走っており、その下に鉄道、そしてその下に民家といった情景が延々と続く。撮影をすると思われるファンがまた降りた。僕も表紙用のヘボ写真を撮る場所を探しているのだが、この辺は開けているので撮りやすいポイントが多いかもしれない。ただ延々と続く堤防が邪魔かもしれない。
 そうやって撮影個所を探しているうちに白根に到着。ここはかつてE原氏と車で山形へ行った帰りに巻潟東ICに行く途中に迷って中之口川のあたりをウロウロしていて、この駅に出てしまった記憶がある。思わぬ所で再会である。切り離すものと思われた後部車両も切り離す事なく白根を発車してしまった。白根で地元客はほとんど降りてしまい、僕と3人のファンだけが乗車している。
 新潟や黒埼の町の中は路地を行くといった感じであったが、白根から先は荒涼としたいっそうもの寂しい景色になった。霧雨が降る中、タイフォンを響かせて月潟に到着。東関屋から21.6Km走って、ここで列車は折り返す。月潟はちょっと小高くなった所に作られた独特の雰囲気を出している駅。おそらく委託であろうおばさんが切符を売っていた。乗ってきたファンは一人がそのまま乗ってきた電車で折り返し、あとの2人連れは駅前の散歩へと出かけて行った。
 乗ってきた電車は7時10分発であるが、すぐに次の7時35分がある。意外と本数があるものだ。すぐ折り返してしまっても面白くないので、僕も駅前を散策する事にした。そう思って駅舎を出ると先ほど乗ってきた電車が折り返し作業に入っており、一旦燕方に数メートル前進してから運転士が降り、反対側の運転台に入っていった。別に転線する訳でもなく、一体何の意味がある操作なのかいまいち分からないが、面白い扱いである。
 霧雨が降る中、路地を歩く。そろそろ夜明けのようで辺りは薄青い光が差している。線路際の家ではオバちゃんが飼い猫を家に入れようと「コッチ来い、コチッ来い。」と餌を出して呼んでいるが、その声が霧雨とうす青い光とまざって響き何とも物寂しい。

 

 

 

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まだ明けやらぬ
東関屋駅で発車を待つ

 

 

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車内で見つけた小さな心遣い

 

 

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回送電車然とした車内に
釣掛モーターの音が響く


 

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霧雨降る中
山の際から
日が昇ってきた

 

 

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朝陽に照らし出される運転台
このハンドルが信頼を
運んできたのだが

 

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