幕開け
3月一八日、定刻より五分ほど遅れて小樽に到着した。小樽のターミナルも
新築らしく、真新しい 匂いがする。ターミナルの規模は新潟よりも大きく、「フェリーあざれあ」の
後方にも舞鶴や敦賀か らの便を繋留する岸壁があり、そちらの方向へ向かってボーディングブリッジ
が長く延びている。空 港のターミナルビルのような雰囲気のターミナルを出ると海からの風がひとき
わ冷たい。フェリーの 写真を撮ろうと岸壁まで行くと、何やら気味の悪いものを踏み付けた。その物
体を見てビックリ!
「ぎゃあ」
と思わず鈍い声を上げてしまい、岸壁に駐車中のトラックの運チャンに変な目
で見られてしまった。 なんと昨日のしけで岸壁に、打ち上げられたヒトデのようなものが、寒さで凍
り付いていた。 小樽駅まではタクシーで向かうことにした。本当は運河沿いに歩こうかと思
ったが、ターミナルの 見物に時間をかけすぎて間に合いそうもなくなってしまった。それに何よりも
、三月の後半だという のに寒い!。タクシーの運チャンは、小樽のターミナルは出来たばかりだの、
あのフェリーは日本一 だのと、自慢ばかりしている。10分程で小樽駅に到着、ハイ、一〇三〇円ナリ
。「トホホ……。早速、
予算オーバー。」
小樽からは江別行きの121MでE氏の待つ札幌まで行くき、札幌でE氏
と合流の後は(E氏 は深川まで同行)、流氷のオホーツク海を見に網走まで行く予定だ。昨晩、フ
ェリーからG氏に電 話したところG氏は風邪をひいているとのことで、大丈夫なのだろうか。
果たして121Mは711系電車だった。新系列の721系は快速「エアポート」と札
幌近郊の区間運転列 車使用されることが多いらしく、足の長い列車は711系が多いようである。結
局今回の旅行で721系に 乗ることは一度もなかった。(といっても普通列車の電車に乗るのはこの一度
きりなのだが。)
121Mは夜明け前の日本海を南小樽、小樽築港、朝里、銭函と快調に走る。
「ほしみ」は二日前の 三月一六日に開業したばかりの駅で、駅前には「新駅のある町、ザ・スプリン
グスほしみ〜分譲中。」 のJR北海道不動産鰍フ看板が建っている。また、次の星置には「JR Da
iei 星置店」の真 新しい建物が建っており、「これは一体何事か。」と思う。あとでE氏に聞
いたところによると、 JR北海道の経営多角化の一貫らしく、自ら宅地開発を行なったり、大手スー
パーと共同で店舗を開 いたりしているそうだ。
六時二八分札幌I番線着。G番線に移動して、「オホーツク1号」の乗車位
置に並ぶ。程なく苗穂 方から、函館からの快速「ミッドナイト」が到着し、E氏が降りてきた。思
ったよりも体調は良さ そうで、「全て順調!。」といたって元気な様子。
E氏と談笑しているうちに、<ミッドナイト>は苗穂方に引き上げ、替わ
って桑園方から<オホー ツク1号>の183系気動車が入線してきた。旭川方面への始発の特急で、旭川
からの各線への乗り継 ぎもいいせいか、自由席を待つ人の列が長く延びており、この列車の人気の高
さがうかがえる。
道内電化のパイオニアとして歴史を刻んだ711系もまだまだ健在である
オホーツク1号の長い旅路
「オホーツク1号」は自由席に、ほぼ定員の乗客を乗せ発車した。昨日の雨
は北海道では雪だった らしく、積もっている雪は融けだした黒っぽいものではなく、真白い新雪のよ
うだ。 「オホーツク 1号」は旭川まで、北海道の大動脈の幹線を、軽快に飛ばす。とはいえ「どう
も迫力がない。」とE氏が嘆く。特急「オホーツク」に使用される183系は最高速度が一一〇q/
h。旭川までは岩見沢、 滝川、深川と「スーパーホワイトアロー」と同じ停車駅だが、所要時間は一時
間三四分と停車駅の多 い最高速度一二〇q/hの「ライラック」の一時間三〇分より四分長く、最高
速度一三〇q/hの 「スーパーホワイトアロー」の一時間二〇分とでは一四分も差がつく。
8時40分旭川着、留萠本線へ向かう江原氏が降りると、他の乗客も約半分が
降りてしまい、車内は 閑散とした雰囲気になる。網走着は12時24分、先はまだ長い。旭川出発後も、
しばらくは平原が続き、 愛別のあたりから山が迫り、上川を出ると、にわかに勾配がきつくなる。「オ
ホーツク1号」は、0 番台車といえど、あえぐふうでもなく力強く登ってゆく。石北トンネルでサミ
ットを越え、今度は、 生き返ったような軽快な足取りで坂を下りだす。期待していた大雪山は、あい
にくの曇天で望めない。
奥白滝、上白滝、白滝、旧白滝、下白滝と、すき焼きが食べたくなる駅名が続
くが、「オホーツク1 号」は白滝のみの停車で軽快に走る。
丸瀬布で特快「きたみ」と交換し、遠軽には一〇時三四分着。遠軽に着くや
いなや車内が忙しくな る。この駅で進行方向が変わるため、皆、座席を回転しはじめるのだ。いつか
盛岡から「たざわ」に 乗った時、大曲のスイッチバックの後、逆向きなのに乗客は皆、平然として座
っているので驚いたこ とがあったが、この座席の回転はそれぞれの列車の習慣によって回転するか否
かが決まっているよう だ。網走まであと二時間弱あるためか、ここの座席回転は、スムーズに終了し
た。もうひとつ、ここ 遠軽では、構内配線上、同じ方向から入ってきて、同じ方向に出発する面白い
交換が見られるが、 「オホーツク1号」は交換列車も無く、そのまま逆向きに出発した。
ところで今日の「オホーツク1号」、所定4両のところ、5両で運転されて
いるが、これは夜行の 「オホーツク9・10号」として運転されるとき、キハ183系0番台車4両+客
車1両では出力が不足 するため、馬力確保のため、やむなくキハ182型を1両増結している編成があ
るとのことだ。また僚 友の「おおぞら」や付随車のグリーン車を連結している「スーパーとかち」に
おいては強馬力型のキ ハ183系500番台車で運転する場合は問題ないそうだ。ちなみに「スーパーとか
ち」は最近、550番台 車を北斗の130q/h対応車にコンバートしたので、0番台車のエンジンを強
馬力型に変装の上、制 御方式にCCSを導入、変速機を変速1段・直結2段、自動切り替え式のもの
に変え、しかも130 q/h対応になった(当分は運用上110q/h)200番台車なるものが登
場している。しかし、 石北本線方面の「オホーツク」は旧態依然のままで、釧路までの高速化が進め
られている今、石北本 線方面の特急が脚光を浴びる日は来るのだろうか。
上り「オホーツク2号」と交換する生田原を過ぎると、再び勾配がきつくな
り、常紋トンネルでサ ミットを越える。常紋トンネルを抜けたところが、有名なスイッチバック式の
常紋信号場だが、シェ ルターの中を進むため、それと気付かずに通過してしまった。北見盆地へ下り
、留辺蘂に停車。さら に平原を走り、市街地の下を貫く、地下鉄のような北見トンネルを過ぎると北
見に到着。ここでまと まった乗降がある。
ここで面白いことに気付く、比較的近距離の都市移動なら、若い人も多いの
だが、札幌からの通し 利用となると年配の方ばかりになる。札幌−網走間の交通シェアはJRの三割
強に対し航空機は、四 割強。所用時間は航空機の新千歳−女満別間が四五分、各空港までのアクセス
時間を入れて二時間半 といったところで、JRの五時間二〇分では太刀打ち出来ない。幸い、新千歳
や女満別空港が市街地 から遠いため、乗り換えを嫌う乗客が「オホーツク」を選ぶのだろう。
網走には一二時二四分到着、五時間一九分に及ぶ長い旅がやっと終わった。
遠軽でスイッチバックのため停車中のオホーツク1号
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