サヨナラ 第3回
(三)別れ
二年、地方都市のメゾネットでの二人の生活は、いつまでともいわず、形を変えながら続くものと思っていた。ミキとはBF5で色々な山、色々な海に言って写真に収めてきた。ミキもその間に、最初に田舎から出てきた娘のイメージはすっかり無くなり、ミキらしい、ミキなりの進化を遂げていた。 「ねぇ、ねぇ、あの娘、彼女?」 「うそー、カワイイ!」 「もったいなーい」 最後の「もったいない」という言葉に少々カチンと来たが、自分の彼女を良く言われて悪いとは思わなかった。 それくらい充実した日々を送っていただけに、それは、ショッキングな出来事として、突然やってきた。 「別れたい」 切り出した、ミキの言葉に、私は何を答えたのか、よく覚えていない、ただ、突然の別れに現実をイマイチよく理解していないようだった。 「8月にみんなで北海道へ行くでしょ。それで終わりにしたい」 更に残酷な言葉であった。別れの日を宣言されたのであった。いっそ、そこでひっぱたかれて、追い出された方が楽だったかもしれないと、今になってみれば思うが、その頃は一分一秒でも、ミキと一緒に居たいがために、その条件を飲んだ 「このまま二人、駄目になってしまうなら、別れた方がいいと思うの」 それが彼女の言葉だった。
かくしてBF5は北海道へ渡る事になった。北海道へ渡る事自体は初めてではないのであるが、車ごと渡るのは初めてであった。小樽の運河、十勝の大平原、野付半島、オホーツク、ハイライトは宗谷岬から礼文、利尻の見える丘。稚内市内のA航空のホテルを見上げ 「こんなホテルにいつかは泊まりたい」 などと思いながら、その晩は夜通し走る事にした。途中、仲間との離合集散を繰り返しながら、1週間強の旅は終わり、フェリーは新潟港に着き、名残を惜しむように、BF5は東京方面へと走った。 「有難う。いい女だったでしょ?」 こみ上げる涙を我慢するのが精一杯で、 「うん・・・」 とだけ答えるだけであった。 この言葉は、生涯、身に沁みる事となった。 それから、彼女という娘は何人かできた。しかしながら、鮮烈なミキブルーに侵されていた私は、なぜか満足できなかった。冷静に考えれば、妻とするならば、ミキ以上の娘も居た。 しかし、何も埋まらない。どんな娘と付き合っても、BG5をどこへ走らせても、そこから生まれるものは皆無であった。
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、出来事とは一切関係ありません。 |
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[(四)再会]
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