湖畔から戻り未成線に足を踏み入れる事にする。かつて深名線の車窓では朱鞠内−湖畔間で左に分かれて行く名羽線の築堤とコウモリの巣と化したトンネルが見えると聞いていた事があり、今回はそれを見つける事を第一目標とした。 古い地形図を見ると道道が朱鞠内川を渡る付近から林道の入口の間の中間点を抜けているはずなのであるが、これがなかなか見つからない。朱鞠内川に沿った道はなく、この道道上から見つけなければトンネルの入口は見つからないはずなのだがどうも景気が悪い。最近、履工事をした事を示す杭もあったりしたので、もしかしたら土を盛った際に埋もれて入口が見えなくなったのかもしれない。いくら探していてもらちがあかないので、林道に入って名羽線沿いに走って見る事にした。
お目当ての林道はそば打ち体験が出来る事で知られるふれあいの家「まどか」の横を斜めに入って行く道である。入口付近は舗装されているがまもなくダートになる。未舗装といってもしっかりした砂利が敷き詰められており比較的走りやすい。道が大きく左にカーブするあたりで名羽線が寄り添ってくるはずである。そろそろ路盤があるのではと目を凝らしていると、何やら獣道のようなものが路盤がありそうな方向に向かって入って行く。「これはもしや」と思い車を降り、中に入ってみた。あまりにも夢中になって走って茂みに分け入っていったので江原氏はあきれた様子であったが、勘は的中していた。これは獣道ではなく誰が歩くのか人が歩く道のようである。そしてそれを少々下ると林道に沿う形で道が分岐している。ちょうど林道に沿って木が伐採されており、バラスト状の砂利が敷き詰められている。これが名羽線の路盤に間違いない。この路盤の朱鞠内側を見ると歩く人がいるのか、しっかり踏み固められており、雑草もそれほど覆い茂ってはいない。これはトンネルまで行けるのではと思い。さすがに江原氏をこの先に連れて行くのは可哀相なので一人で歩いてみる事にした。200メートルちょっとは歩いただろうか。トンネルを見つける事が出来た。名羽線のトンネルは入口に蓋をされたものが多いと聞いていたがこれはゲートがあるだけで簡単に中に入れそうだ。(が立ち入り禁止の札が)付近を見回しすとうっそうと樹木が茂るのみである。すっかり忘れていたがこの辺は熊がよく出没する所だった。そう思うと雨竜ダムの歴史等も思い出してしまい、戦後に公団によって作られたはずのトンネル不気味に見えてきて、あまり長居はしたくないのでさっさと車に戻る事にした。
探すのに苦労した道道下のトンネル。
このトンネルの先で雨竜川を渡り深名線と合流する。車に戻ると江原氏は車を道道の方向に方向転換させて待っていた。僕は行ける所まで行こうと思っていたので、その事を伝えると呆れた様子であったが了承してくれた。ここで問題の事件が起った。車を方向転換させていると「バキッ!」と不穏な音が。江原氏は不安そうだったが木でも折ったのだろうと言う事で先に進むように勧めた。ところが走行していると明らかに変なのである。シュー。シューとタイヤが回転するたびに空気の抜けるような音がする。まさかパンクではあるまいと思うがどうも空気が抜けるような音である。
「困った、大きな街は名寄か士別!。いずれも1時間はかかりそうだ。」
ガソリンスタンドが幌加内にあったが、応急用タイヤに履き替えて旭川まで下って街で修理した方がよさそうだ。
よりによって、こんな所でパンクなんて2人で参ってしまったが、ボーとしていても仕方ないので、とりあえずはジャッキアップしてみる事にした。ジャッキアップし、ATのセレクターをNレンジに入れてタイヤを回してみると「バキッ」と音がして木片が飛び出してきた。
「これが原因ならいいのだが。」
ジャッキを降ろし再び車を動かしてみると異音はしなくなっていた。やれやれほっとしたが夏で良かった。冬だったら危ない所だった。
再び車でしばらく行くと、右手に小川を越えている構造物等を見つける事ができたが、林道はこの先まだまだ続くようだ。せめて一般車が入れる限界までと思ったが江原氏も先ほどのパンク騒ぎもあってこの先のダート走行が不安なようなので林道の終点までは行かずに、この辺で折り返す事にした。こればかりは自分の車やレンタカーではないので仕方がない。この先林道に入る事ができれば、石油沢川にかかる橋脚やサミットの苫竜トンネルの入口をも見る事ができるようである。
一見これが未成線とは思えないだろ
うが一直線に樹木が伐採されて
いる所から路盤を推測できる。
小川を越えるコンクリート製のO字溝
の上に生えてしまった木が長い間放
置されている事を物語っている。
Copyright1998 KUZUWADA-NETi |