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自然と同化してゆく未成線

  今回取材した未成線は道路の建設にあたって取り壊されたり、農地に戻されたりで、その活用の見直し所か、存在すら忘れられている感じであった。
   美幸線の調査で立ち寄った枝幸町では、役場の玄関に「枝幸空港の実現を!」という 大きな横断幕がかかげられていた。 地元の感心は鉄道はもとより見向きもされず、また、「高速道路」というよりは「空港」の方へと向いているようである。未成線関連の質問に続いて、空港についても聞いてみたところパンフレットをいただいた。そのパンフレットによれば北海道と日本エアシステムが共同出資して北海 道エアシステムという会社を設立して、今年の3月から運行を開始したようである。 またそれに伴う新空港建設が持ち上がっており、それが役場の前の横断幕の正体のようである。新空港建設のターゲットは枝幸、名寄、羽幌、 根室、浦河、熊石付近を予定しているようだ。
  なぜ高速道路ではなく、(もちろん計画はあるが)空港に向いているのか不思議 だが、その移動範囲の制約がカギであろう。今回は自動車で北海道を回ったが、北海道と言えども常識の範囲では300Kmが限界である。それ以上では他の交通 機関に転移したくなる。

  その辺の事情はお題展開のバックナンバーに詳しく書いてある事と同じである。ただし、特に狩勝峠や塩狩峠の北(東)の地区では著しくスピ ード違反が習慣化しており事実上高速道路状態である事が違った点である。
  北海道において近中距離移動は自動車の独擅場である事は疑いもない事実であるが、長距離となると事情は違ってくる。例えば、高速道路が開業しても南端の函館から釧路や旭川といった地域に行くのは時間 がかかりすぎて不便である。北海道のスケールの大きさから自動車が自転車程度のツールに萎縮してしまっている かのようだ。そういった風土からごく自然的に空港に感心が向いているものとと思 われる。

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  ところで、自治体が出資して、函館や釧路に就航するのでは、鉄道の高速化と矛盾するのではと思うが、就航予定路線は札幌、函館、釧路、旭川をハブとして、宗谷、留萌中部、日高東部、根室といった、鉄道で著しく時間がかかっている所をターゲットにしたようだ。
我田引鉄の次は我田引空かと思わせるような動向であるが、鉄道が在来線のみだと言う事や高速道路が整備されていない(整備したとしても一般道と所用時間が変わらない)北海道独自の風土が生み出した、アメリカンな発想である。

しかしながら飛行場ができれば地域が発展するという安易な理論も疑わしいものがある。また、近中距離において自由な移動手段である自動車に慣れてしまった人が行き先でどう自由な移動手段を確保するのかも問題になる。北海道エアシステムはまだ就航したばかりだが、そのキメ細かな運行が北海道の地域経済の後押しになるのか、それとも人を流出させるだけで終わってしまうのか、はたまた新空港を建設しても利用者が伸びずに破綻するのか(九州の天草空港の例では採算が立つかどうか怪しいようである。)いずれにせよ、今後の展開が注目される。
 

  未成線の方は残念ながら復活の見込みは全くないし、させるべきではないだろう。天の川トンネルや名羽線道路(未取材)のように第2の人生を送る事ができるのは本当に特殊な幸せな例で、その大半は特定地方交通線の廃線群と共に自然と同化して行くしか道はないようである。

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次作へ続く

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