出発はやはりム
ーンライト
三月一六日の夜は静かな雨が降っていた。天気予報によれば、一七、一八日
と全国的に天気は荒れ るとのことで、明日の日本海が荒れないか心配だ。何分、船の乗船経験が無い
ので船酔いしなければ よいのだが。
最寄りの北鴻巣駅に到着して、重い荷物を背負いながら階段をのぼって改札
前に立つと、夜も二三 時をまわると人の流れもまばらのようで、下り列車の到着と共に自動化間もな
い改札を人がどっと通 り抜けたかと思うとしばらくして、また元の静寂に戻った。有人の〇番改札で
は先程の列車から降り たのか、酔って乗り過ごしたらしいサラリーマンが駅員ともみあっている。上
り列車はすでに終了し ており、北鴻巣からタクシーは出ていないので、一駅先の吹上まで行くか、上
り始発まで駅寝するし かない。誠にご愁傷さまである。 普段と変わらぬ情景の中、ホームに降りて
待つことしばし、やが て上野方にヘッドライトの灯りが走る。985Mは帰宅のサラリーマンを乗せて
はいるものの、東京か ら一時間の地ともなると混雑と言うほどのこともなく、ワンボックスに一人、
ロングの一区画に一人 といった感じ。これから新潟までは例によって新前橋行き985M〜快速「ムー
ンライト」の乗り継ぎ をする。
日付が変わり、前四両が切り離される籠原で「北陸」に道を譲る頃には、サ
ラリーマンはほとんど 降りてしまい、同業者と地元客が数人といった具合になる。僕の前のボックス
にはどうやら「ムーン ライト」に乗り継ぐらしい青年が四人座っているが、このうちの二人はどうも
見たことのあるような 顔。名前は知らないが、特徴のあるこの二人はよく覚えている。まあ、面識が
ある訳でもないので、 黙って夜の車窓に見入ることにした。
高崎では、約一五分の待ち合わせで、「ムーンライト」に乗り継ぐ。いつも
なら車内改札が済めば、 早々に寝てしまうのだが、この日はどうしても寝付けず、「水上」の駅名標ま
でもが記憶にあった。
18きっぷでの北海道入りの定番となった快速「ムーンライト」
(注:現在は改称して「ムーンライトえちご」) |