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サヨナラ 最終回 


(五)蒼い光跡


 

 

 

 

 

私はBG5を売り払った。そして、馬鹿な真似はやめて、真面目な生活を送ろうと、新車のBP5のAT車を買った。もうターボのMT車には乗らない。
  そしてあのクリアなフォトフォルダーに未練がましく保管してあった、ミキから貰った写真は、フォルダーごと1枚も残らず燃やしてしまった。

 

 

 13年の歳月が経った。ミキはあれから早々に結婚し、子供にも恵まれた。私の方はというと、相変わらず破天荒な生き様で、結婚というものは2回している。子供は2人居る。BP5は荒れた人生に翻弄されながらも私の保有した車の中では最も永く、11年を走り、13万キロでその役目を終えた。
  ミキとはあれから一切、連絡を取っていない訳ではなかった。訳も無く電話や、メールがあったりで、年に数回やりとりがあった。年賀状も届いているし、送ってもいる。しかし、平成も20年を過ぎるとSNSというものが発達し、ミキがどんな写真を撮り、どんな生活をしているのかというのが分かるようになった。私にしてもしかり、SNSが出す画像や文体で、私の素性など知られているようなものだ。
  SNSで見る彼女の姿は年を追うごとに、私の愛したミキブルーとは違ったものに見えるようになってきた。ミキから見た私にしても同じなのであろう。

「もうミキブルーではない、自分のブルーがある筈だ」

PCの写真ライブラリを見ながら思った。

週末。三脚とカメラをVM4に積み、出歩くようになって何年経っただろうか。私も中小の小とは言え、社長と言われる身分となった。今更ミキブルーでもない。でも、なぜか、本人を前にしてしまうと、心臓に刺さるトゲのようなものは完全には抜け切っていないようだ。

伸二と私を乗せたVM4は羽田空港の滑走路をトンネルで潜り、羽田空港2ビルに寄せた。

「送迎レーンでいいです。」

と伸二は言ったが、私は立体駐車場にVM4を停め、伸二をゲートまで送った。
  そしてデッキに出てみた。まだ、うっすらと日はあるようで空の青さが残っている。しかし滑走路には灯かりが点ったようだ。伸二を乗せていると思われる787がゆっくりとタキシングをしてゆく。そして「静かな轟音」とともに、東京の空にツバメのように舞い上がった。

電話が鳴った。妻からだった。

「アナタ、今日は遅くなるの?明日詰まってるんだからね。
あぁ・・・・もしかして「ミ」・・・・・フフフ。やめとく。
分かってるから、早く帰ってきて。」

最後の「帰ってきて」のフレーズだけ、何となく、ドキっとするような女の口調になった妻の言葉に、

(・・・・・まったく。こいつも何もかも見透かしてるのかな。・・・・・)

そう、心でつぶやきながら、私はデッキを降り、帰路についた。

 

※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、出来事とは一切関係ありません。

 


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